窃盗罪と横領罪の区別

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Case 2

 被告人は,同僚から集金してきた金銭の入っている鞄を預かった。鞄は中のチャックは閉まっておらず,施錠がされていなかったが,上蓋が閉まっていた状態であった。被告人はこのかばんから金銭を抜き取り逃走した。同僚は,その30分後くらいに戻ってきたところで,鞄から金銭が抜き取られているのを知るに至った。裁判において,被告人の行為は,窃盗罪ではなく横領罪に該当するものであるとして,いずれに当たるかが争われた。

 裁判所は,本件事実関係に照らして,施錠はなされていなかったとしても上蓋が閉まっている等の事情に照らせば,被告人が鞄の中の金銭を取り出すことを許容していたものではないとした。鞄の中の金銭については,なお同僚の支配下にあるとして窃盗罪の成立を認めた。

 窃盗罪が成立するか横領罪が成立するか争われたのが本件事例です。窃盗罪と横領罪では横領罪の方の刑が軽いため,被告人・弁護士としては横領罪の成立を主張したのでしょう。また,本件被告人は,過去にも窃盗罪で捕まっており,累犯前科があったため,窃盗罪を避けたかったのでしょう。窃盗罪か横領罪かの分岐点は,犯罪の対象になった財産の所在が被告人のもとにあったか否かによるのです。自らのもとに占有が認められるのであれば横領罪となりますが,本件では,鞄の蓋の状況や被害者が戻ってくるまでの時間や被害者と鞄の距離に加えて,被害者の意思についても考慮した上で占有の所在が決められています。

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