不法領得の意思

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Case 4

 被告人は,叔父の財産を不正に差し押さえようと支払督促制度を悪用することを考え,虚偽の内容の支払い督促の申立てを行った。そして,叔父から督促異議が出されないように,共犯者が叔父に成り代わって郵便配達員から叔父宛の支払督促正本等を受けとり,廃棄したものである。

 裁判所は,一審,二審において,廃棄するために,郵便配達員から騙取した行為について不法領得の意思が認められるとしたが,最高裁判所は,支払督促正本を廃棄するだけのために受け取った場合は廃棄以外に何らの利用・処分の意思がないのであれば不法領得の意思は認められず,本件行為について詐欺罪が成立することはないとした。

 財産犯が成立するためには不法領得の意思というものが必要となるため,本件においては不法領得の意思の有無について争われた。

 本件事例では,下級審と最高裁の判断が分かれたものであるからその判断はギリギリのところだったのだと思います。不法領得の意思とは,本来の所有権者を排除して,物の経済的用法に従って利用処分する意思のことを言います。本件事例では,支払督促正本を叔父に渡すことなく廃棄することで,被告人は経済的利益を挙げるものであるが,あくまで支払督促正本は廃棄することにこそ主たる役目があり,物の経済的用法に従って利用処分したとは言いにくいため,最高裁はこのような判断を示したのではないでしょうか。

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