未遂と既遂の分かれ目

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Case 5

 被告人は,スーパーマーケット店内から店員の監視の目を盗んで,店内において,買い物かごに入れていた商品をビニール袋に移転させていたところを店員に見つかり,取り押さえられた。

 本件事例において,一審は窃盗既遂罪が成立するとしたものであるが,これに対して,被告人サイドは,店内であることから既遂罪の成立について争ったものである。二審においては既遂となるとしたものの量刑不当と判断した。これに対して,最高裁はレジで代金を払わずに外側に運んだ時点でたとえ店内であっても代金を払った一般客との区別が困難になるため,被告人が商品を取得する可能性が高くなるため窃盗既遂罪が成立するとした。

 窃盗罪が既遂となるか未遂となるかは量刑において大きく影響してくるものであるため,本件事例では既遂となるか未遂となるかがあらそわれました。そのポイントとなるのは,被告人の支配領域まで持ち込んだか否かであると考えられます。支配領域に持ち込めたか否かは,財物の大きさ,種類等の事情の他に,犯人以外の者による捜索が困難な場合等であれば,犯人の支配領域に含まれたと言いやすいでしょう。本件事例では,レジを通さずに持ち込んだ場所が,支払済みの一般客が多くいる場所であるため,店側としては,被告人と一般客の区別が困難であることから「支配領域に持ち込む蓋然性が高まった」として既遂としたのです。

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